情報発信コラム:スペースクリエーション アイ

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第16回 スペースクリエーション アイ
塔(タワー)と大阪

2012年11月
タテヤマアドバンス 大阪支店長 池田 一仁

 今年、東京スカイツリーが開業し、周辺地域を含めて大変な賑わいを見せている。 商業集積「東京ソラマチ」や水族館・プラネタリウム・高層オフィスビルなど、タワーを中心とした新たなランドマークの登場は、新しい需要とモチベーションを生み出している。

 そして ここ大阪も負けてはいない。
 大阪はもともと、高い建物・タワーが好きなところで、地元のタワーには人一倍愛着と プライドを持っているらしい。そんな大阪のタワー・高層建築にまつわる大阪トリビアを紹介したい。

 浪速のシンボル「通天閣」は今年、営業開始100周年を迎えた。(因みに吉本興業も今年で創業100年である。いかにも大阪らしい)
足元に「新世界」を構え、独特の文化と雰囲気を醸し出し、ある意味で近寄り難い“ディープな大阪”がそこにある。100周年記念ムードも加わって最近では展望室へのエレベーターが120分待ちの日もあるとのこと。
 現在の通天閣は二代目だが、建設完成にあたっては、東京タワー(昭和33年完成)に遅れを取らぬ様、昭和31年に完成させたと言われる。(後日談なので真相は不明)
 昭和45年の大阪万博の際には「太陽の塔」をシンボルタワーとし、40年経った今も万博公園内で来園者を迎えている。

 大阪の二大繁華街「キタ」と「ミナミ」。この二大繁華街も タワーの建設を契機に現在の発展の基盤がつくられた。梅田周辺をキタ、難波・心斎橋周辺をミナミと呼んでいるが、その呼び名の普及も、実はタワーに由来している。
 現在、ミナミの浪速区日本橋に「五階百貨店」という電気街がある。「五階」と呼ばれているが三階建てであり、「百貨店」と呼ばれているが実は商店街である。何故?・・・・
 それは明治21年に ミナミ(今宮)に高さ31m.・五階建てのパノラマタワー「眺望閣」が建設されると多くの見物客が押し寄せ、周辺にはタワー客を相手にする多くの露店が賑わい、当時の流行語であった「百貨店」と組合せ、「五階百貨店」となった訳である。 その後、戦後の闇市での賑わいを受けて、そのエリア・商店街・呼び名が現在まで続いている。
(ちなみに難波の大阪高島屋本店の5階は 「gokai」のコーナー名で展開されているが、命名の由来は、「五階百貨店」にルーツとしての敬意を表したものと言われている)
 翌明治22年 キタ(現在の茶屋町)に高さ39m・9階建ての「凌雲閣」が建設され、キタ・ミナミ双方が張り合う結果となった。
(大阪の凌雲閣は、浅草の凌雲閣より1年前に完成、営業を開始している。)
 そして、双方が繁盛を競い合い、「ミナミの五階」「キタの九階(クカイ)」と呼ばれる様になり、現在のエリアにおいてキタ・ミナミの通称が拡がったと言われている。

 どちらの建物も現存していない。
 キタの中心・梅田は、JR・阪急・阪神の鉄道の起点となり、ビジネスの拠点としての位置づけを有しながら、日本最大の地下ショッピングモールや百貨店・量販店も多く集まる。今も開発中の「梅田北ヤード」は2016年の完成〜開業を目指して工事が進行しており、文字通り 商都大阪の玄関口・顔として成長している。
 一方のミナミ。江戸時代の昔から、歌舞伎・狂言・人形浄瑠璃などの無数の小屋・劇場が作られ、人が集まる事で賑わいを維持している街。現在もなんばグランド花月や大阪松竹座などが有名で、ハリウッドやブロードウエィよりも歴史が長い芸能の街でもある。

 その役割こそ違え、人を集める事に貪欲な街 大阪。
前述の様に、梅田は再開発で高層ビルが林立する新しい姿に生まれ変わりつつある。 ミナミは心地よい猥雑さを演出し、多国籍の賑わいで昔ながらの形を残そうとしている。 そして ミナミのもっと南に位置する阿倍野には高さ300m.の日本一の超高層複合ビル「あべのハルカス」が2014年春に完成、オープンする。

 今から 100年以上も前に タワー「閣」の建設に取組み、人を集め、人を楽しませる事に生業を見出した大阪の人たちは、そのサービス精神を今も発揮している。
 新しい何かに対して人が集まり、集積が出来る。そこで喜んで帰ってもらえる。新たなスペースクリエーションが生まれる。文字通り、タワーの如く日々のアンテナを高くしていたい。


100周年の通天閣

謎の五階百貨店

ミナミの眺望閣

キタの凌雲閣

建設が進む梅田北ヤード

100周年に沸くなんばグランド花月

大正の雰囲気を残す大阪松竹座

大阪のタワーの歴史から、その時その頃の世相や市場ニーズが垣間見えた。やはり街には何らかのランドマークの存在が必要で、その街らしさを象徴しながらエリア特性が築かれると納得させられた。最近、坂田三吉を主人公にした名作映画「王将」を観たが、何回かスクリーンに登場した通天閣は、心のランドマークとして希望や勇気を表しているかのようだった。タワーだけではなく、商業スペースでも同様に、どう顧客が感じるかといった場のシーンメイクは最も大切にしなければならない要素であろう。
(商い創造研究所・松本大地)

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