情報発信コラム:スペースクリエーション アイ

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第 13回 スペースクリエーション アイ
新旧の商空間が交差する大阪らしいスペースクリエーション

2012年8月
タテヤマアドバンス 大阪支店 設計課 課長代理 池田順一

 大都市における商業地のスタートは、戦後の闇市によるものが多いと聞く。物資や流通手段が寸断された何もない土地で『生きること』から必然的に生まれたものであり、それは生きる為に一番必要な『食』から始まり『衣』や『住』。更にはそれを満たした所から生まれた『楽』がある。

 大阪ではその時代から商業の基盤として今も続いている稀有な事例も多々あり、現在、焼肉で名を馳せる鶴橋商店街が戦後の鮮魚行商が始まりである事から、お伊勢参りで有名な伊勢から大阪まで鮮魚を運ぶためだけの『鮮魚列車』という列車が今もなお存在するというのは珍しくも面白い例である。

 さて、近年の大阪でのスペースクリエーションといえば、大阪キタ(梅田)大阪ミナミ(心斎橋・難波)に続く第三のターミナル・繁華街となる天王寺・阿倍野に2011年4月26日にグランドオープンしたのが大阪府下最大級のモール型ショッピングセンター『あべのマーケットパークQ’s MALL』である。

 周辺には路面電車を挟み対岸には賑やかな繁華街が立ち並び、新旧の商業施設が織り成す不思議な空間が拡がる。オープンから1年を過ぎたQ’s MALLの印象は、残念ながら当初の賑わいは薄れた感がある。一方、昔からの飲食街は以前と変わらぬペースで活気を持っているのがこの街の強みだろう。

 続いてキタでは都心に残された最後の一等地といわれた大阪駅北地区の『梅田北ヤード』(グランドフロント大阪・大阪ステーションシティなどの複合施設)の開発が進み、一部区画は開業しているものの2013年春・グランドフロント大阪の街開き、2020〜2025年には全体の開発工事が竣工予定となっている。

 大阪ステーションシティのコンセプトは『駅とまちがひとつに 感動と発見にあふれた、新しい大阪駅の創造』というだけあって新しい街の形が創造され雰囲気も激変し昔から変わらぬ駅のホームで周りを見渡し、初めてその位置関係を理解したほどである。

 大阪北区は常住人口約100,000人に対し、昼間人口が約434,000人と大阪府内からのアクセスが良いこともあって格差が激しい土地柄である。また昨年3月にはJR西日本が大阪〜鹿児島間の直通新幹線の運営を開始し、以前の半分ほどの所要時間で九州からの旅行が可能となった。

 このような発展を遂げている大阪キタの新都市空間は(もちろんミナミもだが…)休日だけでなく平日でも買物客や観光客が訪れ、賑わいに溢れている。キタも同様にすぐそばには戦後から続く食堂街などが軒を連ね、夜ともなれば新都市空間に負けない活気が両立する。それが大阪ターミナル駅における商空間の混沌であり、非常に面白い土地柄であり稀有な魅力だと思う。(新しい開発だけでなく昔からの雑多な飲食街が色々と気になるのは、私が生来の酒飲みである事に起因するが…)

 ターミナル話なので少し脱線したが、これからも異文化交流も含めた特有の商空間創造が広がっていくであろう大阪の街づくりに、少しでも貢献できるよう努力していきたい。


鮮魚列車が魚を運ぶ鶴橋商店街

路面電車も走るQ’ s MALL 全景

平日とはいえ厳しそうな集客状況のQ’ s MALL

目下建設中の梅田北ヤード

大阪ステーションシティ内の時空( とき) の広場

大阪駅ホーム上にかかる巨大な屋根

新空間と対比する昔ながらの食堂街

活気あふれる梅田ガード下の飲食街

今回の大阪ターミナル駅の新旧のコラムは、ダイナミックな近代化とパワフルな魅惑のカオスとの都市共存を表している。それぞれが電車で30分以内に京都、神戸、奈良へと繋がる地理的な近接性のある大ターミナル駅。そこから発する活力の源は、共存する特有な庶民文化との融合であり、気さくで人なつっこい大阪人の気風は、他の大都市には無い魅力である。風情とは美意識の一つであり、一般的には長い時間を経て自然によりもたらされる。さすれば大阪の庶民文化からつくられた場所性のスペースクリエーション、消してはならない大切な風情ではなかろうか。
(商い創造研究所・松本大地)

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