情報発信コラム:スペースクリエーション アイ

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第 10回 スペースクリエーション アイ
日常のハレを創りだすスペースクリエーション

2012年5月
株式会社 商い創造研究所 松本 大地

 先日、大阪にて商業施設新聞と商い創造研究所との共同企画による「地域NO.1商業施設戦略セミナー」が開催された。筆者が提言したキーワードは「日常のハレとサードプレイス化」。成熟化が進む米国や日本では、以前のように出店数や大きさで市場を制する量の戦略では立ち行かず、いかに魅力的な施設となるような質の向上を図っていくかにシフトしている。それには日常のハレとサードプレイス化により、身近な日常生活での潤い、楽しみを提供してくれる施設の在り方、店づくりが、顧客のより良いライフスタイルの実現へと繋がっていく構図となる。重要なのは、顧客との間に商品やサービスを超越した情緒的きずなを築くことであり、それが来店頻度を高めていく。3か月に一度来店する顧客が毎月訪れ、一週間に一度来店する顧客が2度になるなど、いかにお気に入りのサードプレイスの存在になっていけるかがポイントとなる。今、現代生活者には3つの居場所が必要とされ、第1の場所(ファーストプレイス)が「家」、第2の場所(セカンドプレイス)が「職場」。そして2つの中間地点にあるお気に入りの第3の場所が「サードプレイス」である。単なるポイントカードの発行だけではお気に入りの場所、サードプレイスにはならず、バーゲンのときだけ訪れる来店客はずっとバーゲンハンターのままである。 来店客から顧客、そして生涯顧客であるロイヤルカスタマーになってもらう関係性づくりが欠かせない。

 そんなセオリーを実証したのが、代官山T−SITEの蔦谷書店である。代官山駅から徒歩5分の旧山手通り沿いに2011年12月にオープンした。「蔦屋書店」を中心に、カフェバー・ダイニング「IVY PLACE」、ペットのグルーミングサロンやドッグガーデン、カメラの専門店「代官山 北村写真機店」、電動アシスト自転車専門店」など専門店や多目的スペース、クリニックなどを配した複合施設で、約4000坪の敷地内には120台の駐車場とタクシープールまで整備されている。 主役の蔦屋書店は従来の「TSUTAYA」とは一線を画し、「大人のための文化の牙城」が施設コンセプト。店舗は3棟の建物が通路で結ばれ、1階の書籍売場は「マガジンストリート」が横断する。「人文・科学」「アート」「建築」「クルマ」「料理」といったジャンルにわかれた専門書の集合体には、それぞれの分野に精通したコンシェルジュが常駐する。例えば、旅の本が集められたコーナーでは、トラベルカウンターと添乗経験豊富なトラベルコンシェルジュと交流するなど、ここでしか体験できないシーンが売りである。 ライブラリー、展示品、カフェなど、すべて計算されつくしたスペースクリエーションとコンテンツは、クールジャパンを代表する店舗として世界に類例のない新業態を創りだしている。

 本やレンタルビデオはどこでも同じ商品が手に入る。リアルなショップに行かなくても、ネット通販でも入手可能である。しかしその商品を日常のハレのステージまで昇華させ、何度でも行きたくなる施設に変貌させたのは、経営者の資質とスペースクリエーションの力である。花火やお祭りのときだけ人が来るのは非日常のハレであり、日常のハレではない。“日常のハレに人が感動する”そんなスペースクリエーションを時代が求めている。


旧山手通りからアプローチする代官山蔦谷書店

パットも日常のハレを楽しむドッグガーデン

電動アシスト自転車店など7つの専門店が集積

子供の創造力を養う本と映像の小部屋

デザイナーホテルのようなAnjinのスペースクリエーション

ライブラリー&ラウンジAnjinでは食事を楽しみながら本に出会う

密度と奥行きで好きな音楽に触れる

都市のエッジを感じさせる大人のコンビニエンスストア
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